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タイ・バンコクの洪水、現在の状況は?2026年の被害と原因を解説

洪水でタイの街中に水があふれる様子

 

※本記事は、2026年10月27日時点の情報をもとに作成しています。最新の状況は、タイ内務省災害防止軽減局(DDPM)やバンコク都、在タイ日本国大使館の発表をご確認ください。

 

タイのバンコクでは、2026年9月24日からの約72時間で300mmを超える豪雨が降り、タイ各地にも洪水被害が広がりました。なお、2026年10月10日時点では、バンコク市内の9割以上で状況が改善しています。

 

ただし、東部6区の97コミュニティ(地区)では浸水が続いていたため(2026年10月10日時点)、旅行や出張、現地に家族・拠点がある方にとって、「タイの洪水がどうなっているのか」は気になる点です。

 

今回は、タイ・バンコクの洪水の状況をタイ全土の被害と併せて整理し、原因やバンコクで洪水が繰り返される事情を解説します。

 

 

目次

     

     

    タイの洪水の現在は?バンコクと全国の被害状況を整理

    洪水に見舞われるタイ

     

    2026年に発生したバンコクを含むタイの洪水被害は、タイ内務省災害防止軽減局(DDPM)が9月16日以降の被害状況を集計しています。*バンコクでは2026年9月26日に全50区が洪水災害地域に指定されましたが、10月9日には東部・北東部の8区へ縮小されました。**

    なお、10月13日時点では、バンコクと20県の計21都県で洪水が続いていました。

     

    *ウェザーニューズ「タイ・バンコク周辺で大雨による洪水」

    **特典旅行「タイ|バンコクでの大規模冠水に関する注意喚起(10/16更新)」

     

    ■2026年9・10月にタイで発生した洪水被害状況の経過

    時点 状況
    9月16〜28日 41県とバンコク都で約92万7,000世帯・約256万人が被災し、23人が死亡
    9月25〜26日 バンコク都が25日に東部3区、26日に全50区を洪水災害地域に指定
    9月28日 28県とバンコク都で洪水が続き、約255万人に影響
    10月9日 災害地域の指定を東部・北東部の8区に縮小(全50区のうち42区を解除)
    10月10日 バンコク市内の9割以上で状況が改善。東部6区の97コミュニティで浸水が継続
    10月13日 バンコクと20県の計21都県で洪水が続き、約245万人が影響
    10月16日 バンコクの中心部や主要道路の冠水は報告されておらず、両空港は通常運用。18日以降は雨が少なくなる見通し
    10月20日 タイ政府報道官が、9月末からの洪水で被災した66都県の148万1,401世帯向けに、105億887万6,400バーツ(約494億円)の追加支援を閣議で承認したと発表
    10月23日 9月16日以降の洪水による死者が64人に
    10月27日 20県とバンコク東部の2区で洪水が続き、約98万人が影響。各地で水位は低下

    ※参考:本文中の脚注のほか、

    NNA(Yahoo!ニュース)「【タイ】全国21都県でいまだ洪水被害、245万人に影響」

    The Nation「Thailand floods still affect…」(2026年10月23日)

    The Nation「Thai floods affect 978,000…」(2026年10月27日)

    Al Jazeera「Disaster zone declared across Bangkok…」(2026年9月26日)

     

     

    タイ全土の被害状況|21都県で約245万人に影響

    タイ内務省災害防止軽減局(DDPM)は、10月13日午前6時時点でバンコクと20県の計21都県で洪水が続き、90万6,083世帯・245万1,860人が影響を受けたと発表しました。洪水が続く地域は99郡・区、804タンボン(行政村)、6,037村に及びました。

     

    なお、10月20日には、タイ政府報道官が、9月末からの洪水で被災したバンコクなど66都県の148万1,401世帯を対象に、105億887万6,400バーツ(約494億円)を追加で拠出すると発表しました。これは閣議で承認されたもので、タイ内務省災害防止軽減局(DDPM)が政府貯蓄銀行を通じて支払います。***なお、この世帯数は支援の対象世帯の数で、10月13日の「洪水が続く地域」の影響人数とは、集計の範囲が異なります。

     

    日本経済新聞によると、経済活動への影響では、洪水で部品の納入が滞って停止していたトヨタ自動車のタイ国内の工場が、10月19日までに順次生産を再開したと報じられています。****

     

    ***時事通信「【タイ】洪水被災者支援で105億バーツを追加拠出 148万世帯対象」

    ****日本経済新聞「タイ豪雨被害から回復、トヨタ生産再開 1週間混乱の航空は検証急ぐ」

     

     

    バンコクの被害状況|全50区が災害地域に指定され、東部で水が残る

    バンコクでは、9月24日の午後から27日の午後まで約3日間、雨がほとんど止み間なく降り続きました。そのことにより、9月25日にバンコク都が東部3区を、26日には全50区を洪水災害地域に指定しましたが、10月9日には指定を東部・北東部の8区に縮小しました。

     

    この残る8区は、クローンサームワー、ブンクム、プラウェート、ミンブリー、ラートクラバン、サパーンスーン、サーイマイ、ノーンチョークです。スクンビット周辺のワッタナー区は、10月9日までに指定が解除されています。*****

     

    なお、10月10日時点では、バンコク都知事が市内の9割以上で状況が改善したと明らかにした一方、東部のミンブリー、ノーンチョーク、プラウェート、サパーンスーン、ラートクラバン、ブンクムの6区では計97コミュニティで浸水が続いていました。******今回の洪水で、バンコクでは約32万9,000世帯が被災したとされています。

     

    *****特典旅行「タイ|バンコクでの大規模冠水に関する注意喚起(10/16更新)」

    ******thaich.net「バンコクの洪水被害は9割以上改善、東部6区の97コミュニティで浸水続く」

     

     

    タイへの旅行・出張への影響

    10月16日10時時点で、タイ・バンコクにあるスワンナプーム国際空港とドンムアン国際空港はいずれも通常どおり運用されており、バンコクの中心部や主要道路の冠水は報告されていません。なお、18日以降は雨が少なくなる見通しとのことでした。

     

    タイ国際航空は、9月26〜30日の豪雨・洪水の影響で、欠航が200便を超え、手荷物が累計で約2万5,000個に上ったと明らかにしています。10月16日からは、今回の洪水で影響を受けた利用者からの補償申請の受け付けを始めました。

     

     

    バンコクで洪水が起きた原因

    タイで豪雨が降っている様子

     

    今回の洪水は、約72時間で300mmを超える雨と、北部から中部へ流れ下る水が重なって起きたとされています。豪雨をもたらしたのは、バンコク周辺に停滞した背の高い低気圧です。

     

     

    気象要因:低気圧の停滞で約72時間に300mm超の雨

    熱帯収束帯(赤道付近で雲が帯状に連なる領域)に対応する東西方向のシアライン(風の向きが変わる線)上で低気圧が発達し、バンコク周辺に停滞しました。その低気圧の周辺には暖かく湿った空気が流れ込み、積乱雲が次々に発生・通過したことにより、72時間で300mmを超える大雨がもたらされたのです。

     

     

    流域の要因:バンコク北部から中部に流れ下る水と運河のあふれ

    豪雨に加え、バンコクの北部から中部へ流れ下る水が各地に負荷をかけているとされています。バンコク東部では、豪雨による増水により主要な運河があふれ、浸水の被害が広がりました。

     

     

     

    バンコクの洪水が繰り返される理由

    水があふれるタイの様子

     

    バンコクでは、2011年にも大洪水が発生しており、洪水が繰り返されています。その背景には、海抜ほぼ0mの低地という地形と、排水能力の限界があります。

     

     

    ほぼ標高0mの低地と排水能力の限界

    バンコクと約100km上流のアユタヤとの標高差は、2mほどしかありません。そのため、川の流れが遅く、上流の水が河口に到達するまで数週間かかるとされています。

     

    また、バンコクでは、雨水の排水を行うために、総延長2,600kmの排水路と6,400kmの下水道が敷設されています(2021年時点)。排水施設は、1日80mmの雨(時間雨量に換算すると約58.7mm)を処理できるように設計されています。

    しかし、今回の約72時間で300mm超という雨は、平均しても1日あたり100mmを超え、設計値の1日80mmを上回りました。実際の雨には強弱があるため、強く降った日や時間帯には、設計値との差はさらに大きかったと考えられます。

     

    さらに、バンコクでは、都市の拡張や地盤沈下に加え、ゴミや土砂による排水路・下水道の詰まりも排水の課題です。*******

     

     

    2011年にも大洪水が起き、治水対策の遅れも指摘されている

    2011年のタイ洪水では、被災者が約230万人、死者が800名を超えたとされています。*******また、7つの工業団地で計804社が被災し、そのうち日系企業は449社に上ったとされます。

     

    2013年時点の経団連の報告では、タイ政府がダムや主要河川の堤防、放水路、洪水予測システムなどの治水整備を10事業に分割して入札したものの、環境アセスメントと公聴会の手続きのために、スケジュールが遅延していたとされています。********

     

    *******東京海上ディーアール「2011年タイ洪水から10年を迎えて」

    ********経団連「週刊 経団連タイムス No.3152 2011年秋のタイにおける大規模洪水後の取り組みと課題聞く」

     

     

    バンコクの洪水と共通する日本の水害における課題

    側溝から水があふれる

     

    今回のタイのように、降った雨を排水路や下水道が処理しきれないと、川から離れた場所でも浸水が起きます。この現象は「内水氾濫」と呼ばれ、日本の都市にも共通する課題です。

     

     

    市街地に降った雨が排水しきれずあふれる「内水氾濫」

    内水氾濫、外水氾濫

    ※出典:国土交通省「下水道による浸水対策」

     

    内水氾濫とは、市街地に降った雨を排水路や下水道が処理しきれず、あふれる現象です。川の増水による「外水氾濫」と違い、川から離れた場所でも起こります。

     

    また、内水氾濫は、河川の水位が上がることでも起こります。河川は大雨で増水すると中・下流域の水位が高くなり、本川に合流する都市部の中小河川(支川)から本川へ大量の雨水を流せなくなって、地表に水があふれ出ることがあります。

     

    国土交通省の水害統計によると、2013(平成25)年〜2022(令和4)年の10年間の日本全国の水害被害額(合計約4.1兆円)のうち、約34%(約1.4兆円)が内水氾濫によるものです。また、浸水棟数でも、約59%(約17万棟)が内水氾濫によるものでした。*********

     

    *********国土交通省 水害ポータル「近年の全国における水害被害(平成25年~令和4年)」

     

     

    ■近年の全国における水害被害(平成25年~令和4年)

    外水氾濫・内水氾濫のグラフ

    ※出典:国土交通省 水害ポータル「近年の全国における水害被害(平成25年~令和4年)」

     

    国土交通省によると、都市化の進展などで地面に水が染み込む面積が減り、雨水の流出量が増えたことで、河川や下水道にかかる負担が増えています。2019年の令和元年東日本台風では、内水氾濫による浸水被害が東日本を中心に約3万戸で発生し、下水処理場16か所が浸水により機能停止しました。**********

     

    **********全国上下水道コンサルタント協会「水坤」Vol.60(国土交通省 下水道事業課 寄稿)

     

     

    内水氾濫について知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

    【内水氾濫】排水能力を超える雨と都市浸水

     

     

     

    日本でも増える短時間の強い雨

    降水量の増加を示すグラフ

    ※出典:林野庁「令和4年度 森林・林業白書」

     

    気象庁のデータをもとに、1976〜1985年の10年間と2012〜2021年の10年間を比べると、1時間降水量50mm以上の短時間強雨の平均年間発生回数は、約1.4倍に増えています。***********排水路や下水道の設計を超える雨が増えれば、日本の都市でも排水が追いつかない場面が増える可能性があるといえるでしょう。

     

    ***********林野庁「令和4年度 森林・林業白書」

     

     

    バンコクの洪水から考える、豪雨と排水能力の限界、私たちの備え

     

    2026年9月のバンコクの洪水は、約72時間で300mmを超える豪雨と、北部から中部へ流れ下る水が重なって起きました。バンコクは全50区を洪水災害地域に指定し、10月10日時点でも東部の一部で浸水が続きましたが、10月16日時点では中心部や主要道路の冠水は報告されていません。

     

    バンコクは海抜ほぼ0mの低地で、排水能力も1日80mmの雨を設計値としています。そのため、今回のような豪雨が続くと排水が追いつかず、川から離れた場所でも浸水する「内水氾濫」が起こり得ます。2011年にも、タイでは、同じ地形のもとで大洪水が起きています。

     

    タイで起こった内水氾濫は、日本の都市にとっても他人事ではありません。1時間降水量50mm以上の短時間強雨は増えており、排水路や下水道の設計を超える雨が降れば、日本のどの地域でも起こる可能性があります。自治体が公表する内水ハザードマップなどで、自宅や職場の周辺の浸水リスクを確認し、大雨のときにどう動くかを考えておきましょう。

    施設や敷地の排水計画について専門家に相談したい方は、ニホン・ドレンの技術相談窓口もご利用ください。

     

     

     

    世界の水事情について知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

    ネパールの氷河はなぜ融ける?温暖化と水問題の関係とは

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    バンコクの洪水についてよくある質問

     

    Q1. バンコクの洪水は、現在も続いていますか?

    A1. 2026年10月16日10時時点では、バンコクの中心部や主要道路の冠水は報告されておらず、スワンナプーム国際空港とドンムアン国際空港も通常どおり運用されていました。一方、10月10日時点では、東部6区の97コミュニティで浸水が続いており、10月27日時点でも、バンコク東部の2区で洪水の影響が続いていました。なお、最新の状況は、DDPMやバンコク都の発表で確認してください。

     

     

    Q2. バンコクでは、なぜ洪水が繰り返し起きるのですか?

    A2. バンコクの市街地は海抜ほぼ0mの低湿地が河口まで続き、約100km上流のアユタヤとの標高差も2mほどしかありません。排水施設は1日80mmの雨を設計値としているため、これを上回る雨が降ると排水が追いつかなくなります。さらに、地盤沈下やゴミ・土砂による排水路の詰まりも課題とされています。

     

     

    Q3. バンコクへ旅行や出張をする場合、何を確認すればよいですか?

    A3. 航空会社や空港運営会社、タイ政府観光庁の最新情報に加えて、外務省の「海外安全ホームページ」と在タイ日本国大使館の情報などを確認してください。なお、2026年10月16日時点では、夕方から夜にかけての強い雨で、道路が一時的に冠水するおそれがあると伝えられていました。