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ネパールの氷河はなぜ融ける?温暖化と水問題の関係とは

ネパールの氷河と湖

 

2026年8月、ネパールと中国の国境地帯で、岩や氷の崩落をきっかけとする大規模な洪水・土石流が発生し、氷河が密集するヒマラヤ地域の異変が改めて注目されました。ネパールの氷河では、近年、融解のペースが加速しており、洪水や水資源への影響が懸念されています。

 

今回は、ネパールの氷河に発生している事象とともに、温暖化との関係や現地の水問題についても、わかりやすく紹介します。

 

 

目次

     

     

     

    ネパールの氷河に今何が起きているのか

    ネパールの大規模土石流による被害

    出典:ICIMOD 「Jitendra Raj Bajracharya」

     

    ヒマラヤ山脈に囲まれたネパールには数千の氷河がありますが、近年、その融解が急速に進んでいます。ここでは、2026年8月に発生した災害と、氷河融解の実態を示すデータを紹介します。

     

    2026年8月に大規模土石流が発生

    2026年8月26日午前8時37分ごろ、ネパールのラスワ地区と中国チベット自治区ギロン県の国境地帯で、岩や氷の崩落をきっかけとする大規模な土石流が発生しました。

     

    この大規模土石流は、標高7,227mのランタン・リルン峰の北斜面から岩と氷を含む巨大な岩盤が崩落し、土砂や氷を巻き込みながらボテコシ川・トリシュリ川の流域を猛スピードで流れ下ったことが、直接的な引き金と見られています*。多数の死者・行方不明者が出る大規模災害となり、現在も被害状況の確認が続いています。

     

    なお、その大規模土石流を捉えた衛星画像の解析では、現場周辺の雪氷の面積が過去30年間で約9.3%減少していたことも確認されており、斜面を支えていた氷の喪失も山の不安定化につながったと考えられます**。

     

     

    氷河融解が進行している

    ヒンドゥークシュ・ヒマラヤ地域全体では、2000年以降、氷河から氷が失われる速度である氷損失速度が約2倍になりました***。1990年から2020年の30年間で氷河の面積は約12%、推定氷量は約9%減少し、1975年以降の氷の厚さの喪失は最大27mに達したと報告されています***。

     

    また、世界に存在する約21万5,000の氷河を対象とした研究では、温暖化による気温上昇が1.5℃に抑えられたとしても、今世紀末までに約半数の氷河が消失する可能性が示されています。****。

     

     

    氷河湖決壊洪水(GLOF)が増加している

    研究によると、氷河が融けてできた氷河湖が決壊する「氷河湖決壊洪水(GLOF)」の発生件数は、1980年代の年間5.2件程度から現在の年間15.2件程度へと、約3倍増加しました**。

     

    なお、GLOFの発生頻度は世界的に増加しており、ヒマラヤを含む高山地域でもリスクが指摘されています。気温上昇から決壊までには数十年規模の時間差があるともいわれており、過去の温暖化の影響が、今後さらに表面化する可能性も指摘されています**。

     

    *ICIMOD「Kyirong-Rasuwa Flood 2026: Nepal-China Cryosphere Risk」

    **ウェザーニュース「過去30年で雪氷面積が約9%縮小 ネパール土石流を引き起こした山体崩壊と今後のリスク」

    ***ICIMOD「Hindu Kush Himalaya glaciers losing ice at double the rate since 2000」

    ****NASA「NASA-Funded Study: Half of Glaciers Vanish with 1.5 Degrees of Warming」

     

     

    ネパールにおける氷河の急速な融解と温暖化との関係

    ネパールの氷河の融解

    出典:NASA「NASA-Funded Study: Half of Glaciers Vanish with 1.5 Degrees of Warming」

     

    ネパールの氷河融解の背景には、地球規模の温暖化とヒマラヤ地域特有の事情があります。以下では、気温上昇のペースと、山の不安定化につながるメカニズムを解説します。

     

    ヒマラヤ地域で進む急速な温暖化

    ネパールのヒマラヤ山脈を含む高山地域は、地球全体の平均を上回るペースで気温が上昇しています。気温上昇により氷河の融解速度が増し、氷や雪の量が長期的に減少しているのです。

    そのため、ヒマラヤ山脈の支脈であるランタン・リルン峰周辺の夏季の気温は、長期的な記録平均より、1.5〜2℃程度高くなったとも報告されています*。

     

     

    気温上昇が引き起こす山の不安定化

    気温上昇に伴い山の地中で凍結していた永久凍土が融解し、岩の割れ目を固めていた氷が失われることで、ヒマラヤ地域では地滑りや山体崩壊が起きやすくなっています。

     

    そのため、2026年8月にネパールで発生した大規模土石流も、断層帯に近い破砕帯の岩盤に亀裂が生じ、夏の融解水がそこに浸透して滑りやすくなったことが要因の1つと見られています*。衛星レーダーの観測では、崩落の3〜4週間前から、斜面が最大30cmほど動いていたことも確認されました*。

     

    *ICIMOD「Kyirong-Rasuwa Flood 2026: Nepal-China Cryosphere Risk」

     

     

    氷河の融解や上下水道ネパールの水問題

    ネパールの水場

     

    氷河の融解は、災害リスクだけでなく、ネパールで暮らす人々の水環境にも影響を及ぼしています。また、ネパールでは、上下水道インフラの管理不足といった課題も抱えています。

    ネパールにおける水問題を、氷河融解が与える将来的な水資源への影響と併せて説明します。

     

     

    洪水や土石流など、下流地域への被害

    氷河の融解や氷河関連災害の影響を受けるネパールの下流域には、約200万人が暮らしているとされます。氷河融解や氷河湖決壊による、洪水・土石流のリスクにさらされているといえるでしょう*****。

     

    実際に、2026年8月に発生した大規模土石流でも、下流域にある住宅・農地の浸水、道路・橋梁の損壊など、生活基盤への被害が広い範囲で確認されました。GLOFの発生頻度が増すほど、こうした被害が繰り返し起こる恐れがあると考えられています。

     

    さらに、山間部は一度被災すると復旧に時間がかかりやすく、水環境を含む下流域の暮らしへの影響が長期化しやすい点も、課題として挙げられています。

     

     

    上下水道インフラの管理不足と水質汚染

    ネパールでは、水道設備の整備が進んでいる一方、設備の機能維持や水質管理に課題が残っています。UNICEFによると、水源の汚染や、水供給システムの修繕不足などが指摘されています******。また、不十分な衛生設備や排せつ物の管理などにより、水源が汚染されてしまい、安全な飲み水を確保しにくい地域もあるのが事実です。

     

    さらに、山岳地帯は交通の便が悪く、資材の運搬や技術者の確保が難しいことが災害時の復旧の遅れにつながっていると見られます。汚染された水を使わざるを得ない地域では、下痢などの水系感染症のリスクが高まることも懸念材料のひとつといえるでしょう。

     

     

    将来的な水資源への影響

    氷河からの融解水や雪解け水は下流地域の河川流量を支え、乾季には農業や生活に利用される重要な水源の1つとなっています。

     

    そのため、短期的には融解の加速によって川の水量が一時的に増える場合もありますが、氷河そのものが縮小し続ければ、将来的に乾季の水量が減少し、水資源の不安定化につながる懸念があります。上下水道インフラの老朽化という課題と重なることで、水量・水質の両面でネパールの暮らしに影響が及ぶ可能性も考えられるでしょう。

     

    *****CNN.co.jp「氷河の下流に住むことが命に関わるリスクになった理由、ネパール洪水で危険浮き彫りに」

    ******UNICEF「Water and Sanitation (WASH)」

     

     

    ネパールの氷河融解が示す、温暖化と水問題のつながり

    ネパールの水道で水を飲む子ども

     

    ネパールでは近年氷河の融解が加速しており、2026年8月の大規模土石流のように、山の不安定化や洪水リスクの高まりとして表面化しています。氷河融解の背景には、地球規模の温暖化とヒマラヤ地域特有の気温上昇などがあり、GLOFの増加や下流地域の水資源、上下水道インフラの課題とも密接な関わりがあります。

     

    こうした変化はネパールのみに留まらず、氷河を水源とする河川の恩恵を受けるヒンドゥークシュ・ヒマラヤ地域全体の暮らしにも関わる問題です。ネパールの氷河融解と水問題は切り離せない課題であり、今後も現地の状況や国際機関による調査・観測を注視していく必要があるといえるでしょう。

     

     

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    ネパールの氷河についてよくある質問

     

    Q1. なぜネパールの氷河は融解が進んでいるのですか?

    A1. ネパールのヒマラヤ地域では、気温上昇の影響などにより、氷河の融解が進んでいるためです。特に、ヒンドゥークシュ・ヒマラヤ地域では、2000年以降の氷損失速度がそれ以前より大きく加速しています。

     

    Q2. 氷河湖決壊洪水(GLOF)とは何ですか?

    A2. 氷河の後退などによって形成された湖や、氷河・モレーンなどに堰き止められた湖が決壊し、大量の水や土砂が下流へ流れ出す現象です。ヒマラヤ地域では近年、発生件数が増加していると報告されています。

     

    Q3. ネパールの水問題は今後どうなるのですか?

    A3. 氷河融解の進行により洪水リスクが高まる一方、乾季の水源としての役割低下も懸念されており、上下水道インフラの整備と併せた対策が求められています。