プラスチック

脱プラスチックとは?提唱される背景と世界や日本の取り組み

脱プラスチック 脱プラ

 

近年、環境保全の考えから、プラスチック削減、脱プラスチックの動きが加速しつつあります。2020年7月1日より、全国のコンビニやスーパーでレジ袋(ビニール袋)が有料化となったことは記憶に新しいでしょう。本記事では、脱プラスチックとは何かやプラスチックが引き起こす問題、脱プラスチックに向けた世界や日本の取り組みをご紹介します。

 

目次

     

    脱プラスチック(脱プラ)とは

    脱プラスチックとは

    脱プラスチックは、「ペットボトルやレジ袋など、プラスチック製品の利用を制限しよう」という動きや考えのことを指します。具合的には、スーパーに行った際にレジ袋を使わずにマイバックを使う、カフェでプラスチックのストローの代わりに紙のストローを使う、などといったことが挙げられます。近年、なぜこのような脱プラスチックの動きが拡大してきたのでしょうか。

     

    脱プラスチック(脱プラ)が提唱される背景

    ▼プラスチック廃棄量の予測

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    出典:環境省『プラスチックを取り巻く国内外の環境<第3回資料集>』

     

    環境省の資料によると、1950年以降生産されたプラスチックの量は世界で約83億トンを超え、そのうち約63億トンがゴミとして廃棄されているそうです。また、ゴミとして回収されたプラスチックの約79%が埋め立て、もしくは海洋などへ投棄されていると言われています*。

     

    軽くて耐久性に優れ、加工もしやすいなどの特徴から、さまざまな製品に利用されるようになったプラスチック。しかし、自然分解されないため、環境の中に流出してしまうと、半永久的に残ってしまうのです。

     

    近年、ESGという企業経営や成長において、環境、社会、企業統治といった観点から配慮が必要という考え方が広まり、世界的に企業の社会における責任は増大しました。機関投資家や個人株主が投資先を選ぶ際、企業のESGへの取り組みにも注目するようになってきています。このようなことから、政府だけではなく、国内外の企業も脱プラスチックに取り組むようになりました*。

     

    *環境省『プラスチックを取り巻く国内外の環境<第3回資料集>

     

     

    プラスチックが引き起こす環境問題

     

    石油から製造されるプラスチックは、熱や圧力を加えることで、自在に加工できます。さらに、プラスチックはさまざまな工業製品に使用され、私たちの生活を豊かにしてくれています。しかし、その一方で、深刻な環境問題を引き起こしているのも事実といえるでしょう。

     

    プラスチックが関係するさまざまな環境問題がありますが、ここでは主に、「海洋汚染」と「地球温暖化」といった観点から考えてみましょう。

     

    海洋汚染

    海洋に流出したプラスチックゴミは、海洋環境の悪化や海岸機能の低下だけでなく、景観への悪影響や船舶航行の障害まで、さまざまな問題を引き起こしています。環境省の資料によると、毎年約800万トンのプラスチックゴミが海洋に流出しているという試算や、2050年には海洋中のプラスチックゴミの重量が魚の重量を超えるという試算もあるそうです**。

     

    近年では、5mm以下の微細な「マイクロプラスチック」による、海洋生態系への影響が懸念されています。このマイクロプラスチックを摂取した魚や動物を私たち人間が食べることによって、アトピーや不妊症などが発症すると言われています。

    **環境省『令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書

     

    地球温暖化

    製造する過程やゴミとして焼却される過程で、石油を原料とするプラスチックは、二酸化炭素を大量に発生させます。二酸化炭素は、地球温暖化の原因となっている温室効果ガスの1つです。

     

    温室効果ガスが大量に排出されると、大気中の濃度が高まり熱の吸収が増えます。その結果、気温が上昇し、これを地球温暖化といいます。

     

     

    脱プラスチックへ向けた、各国の取り組み

     

    このような環境へ害を及ぼすプラスチックの量を削減するため、世界各国はどのような取り組みを行っているのでしょうか。代表的な施策を挙げていきます。

     

    EU

    フランス

    2020年1月1日以降、使い捨てのプラスチック容器の使用が原則禁止になりました。2021年からはストローやカトラリー類、持ち帰り用カップのフタ、発泡ポリスチレンの容器やボトルなど、2022年からは、ティーバッグや野菜や果物の包装、おまけのオモチャ、新聞や雑誌のプラスチック包装が禁止に。2023年1月には、イートイン用の食器に再利用可能なカップやグラス、カトラリーの使用が義務づけられました。

     

    イタリア

    2020年1月1日より、マイクロプラスチックを含有する、洗い流せる化粧品の製造およびマーケティングが禁止されました。

     

    イギリス

    2020年10月1日、イングランドで使い捨てプラスチック製ストロー、プラスチック製マドラー、プラスチック軸綿棒の供給を禁止する規制が施行されました。

     

    アメリカ

    週ごとに規制していましたが、2021年11月、米国環境保護庁(EPA)2030年に向けたリサイクル率50%達成のための「国家リサイクル戦略」を発表。アメリカ全体でリサイクル可能な商品の増加や、リサイクル過程における環境負荷の軽減を目指すこととなりました。

     

    アジア

    インド

    2022年7月1日より、使い捨てプラスチックの使用を禁止。対象は、スプーンやフォーク、ストロー、食器、包装用フィルム、風船、キャンディー、アイスクリームに使用する棒、タバコ容器など多岐にわたります。

     

    中国

    2022年までに、中国全土でのプラスチック袋の使用を禁止しました。生鮮食品のプラスチック袋の利用は2025年までは免除されますが、都市部を中心に段階的に規制が始まります。2021年から飲食店での使い捨てストローの提供は禁止され、2025年以降は宿泊施設では使い捨てのプラスチック製アメニティの無料提供が禁止に。

     

    台湾

    ストロー、コップ、レジ袋などの使い捨てプラスチック製品を、2030年までに全面禁止します。2025年には、使い捨てのストロー、レジ袋、食器、コップの利用について消費者の追加料金支払いが義務化に。

     

     

     

    現状の日本の脱プラスチックへの取り組み

    主要な地域・国の中で日本が2番目に多いと言われる***、プラスチック大国・日本。こうした世界的な脱プラスチックの流れを受けて、日本でもさまざまな取り組みが始まっています。

     

    プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン

    2020年7月より、コンビニエンスストア等の大手小売事業者から地域の商店街の専門店 まで、事業者の規模を問わず全ての小売業者が対象に、レジの有料化が義務付けられました。

     

    プラスチック資源循環促進法

    2022年4月からは、「プラスチック資源循環促進法」が施行されました。プラスチック製品の設計から販売、廃棄物の処理という全体の流れのなかで3R+Renewableを進め、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行を推し進めて行こうという法律です。

     

    3R+Renewableとは、ごみを減らす3通りの方法(リデュース、リユース、リサイクル)を標語にした「3R(スリーアール)」に、従来「ゴミ」とされていたものを再生可能な資源に替えることを意味する「リニューアブル」を加えたもの。「プラスチック資源循環促進法」の基本原則となっています。

     

     

    まとめ

    レジ袋を、かつて1人につき1日1枚使っていたと言われる日本。国や自治体の力だけでは、膨大な量のプラスチックを削減することは難しいでしょう。将来へ持続可能な社会を残していくために、私たち一人ひとりが意識をして、プラスチックのゴミ削減していくことが大切です。

    ***環境省『レジ袋チャレンジ