防災
南海トラフ地震とは?想定される震度や被害の大きさ、できる対策を紹介
2024年8月、日向灘を震源とするマグニチュード7を超える地震の発生により南海トラフ地震発生可能性が高まっていると考えられたことから、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が政府より発表されました。
その際は、地震の発生から1週間後に南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)発表に伴う政府としての「特別な注意の呼びかけ」を終了しましたが、南海トラフ地震はいつ起きてもおかしくない地震とされています。
南海トラフ地震とはどのような地震で、発生するとどのような被害が想定されているのでしょうか。自分でできる地震対策とともに、あらかじめ確認しておきましょう。
目次
南海トラフ地震とは
日本付近のプレートの模式図
※出典:国土交通省 気象庁「南海トラフ地震とは」
静岡県の駿河湾から遠州灘、和歌山県の熊野灘、紀伊半島の南側の海域、高知県の土佐湾、宮崎県の日向灘沖までの、フィリピン海プレートとユーラシアプレートが接する海底にある溝状の地形の区域を「南海トラフ」といいます。
南海トラフ地震は、これまで約100~150年間隔で繰り返し発生しており、前回の南海トラフ地震である「昭和東南海地震」(1944年)と「昭和南海地震」(1946年)の発生から、70年以上が経過しました。そのため、次の南海トラフ地震は発生する切迫性が高まっているといわれています。
南海トラフ地震で想定される震度の大きさや津波の高さ
政府の中央防災会議は、最大クラスの南海トラフ地震が発生した際の震度の大きさや津波の高さも想定しています。現在想定されている震度の大きさや津波の高さは、以下になります。
南海トラフ地震発生時の想定震度
南海トラフ巨大地震の震度分布
※出典:国土交通省 気象庁「南海トラフ地震で想定される震度や津波の高さ」
南海トラフ地震で最も陸側に強い揺れが発生した場合、想定される震度分布は上の図のようになります。静岡県から宮崎県にかけての一部では震度7を記録する可能性があるほか、隣接する広い地域では震度6強から6弱の強い揺れになると想定されています。
南海トラフ地震発生時の想定津波高
南海トラフ巨大地震の津波高
※出典:国土交通省 気象庁「南海トラフ地震で想定される震度や津波の高さ」
南海トラフ地震が発生した場合には、津波の発生も想定されています。こちらも最も陸側に強い揺れが発生した場合、関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域には、上の図のように10mを超える大津波が発生する可能性があるとみられています。
南海トラフ地震発生時の被害想定
南海トラフ地震が発生した際の、死者・行方不明者数や建物被害などは、どの程度だと想定されているのでしょうか。現在想定されている被害の大きさを見ていきましょう。
南海トラフ地震での被害想定は東日本大震災を超える可能性も
※出典:国土交通省 中部地方整備局「南海トラフ巨大地震に備える 展」
政府が公表する南海トラフ地震での被害想定によると、揺れによる被害が最大となるケースの場合、上の図のように被害は東日本大震災を上回る可能性があるとされています。南海トラフ地震の場合、主に岩手県から宮城県、福島県までに集中していた東日本大震災と比べ、静岡県から宮崎県までの太平洋側の幅広い地域に影響があるためだと考えられます。
南海トラフ地震での県別の被害想定
朝日新聞社と関西学院大学災害復興制度研究所は、2015年の共同調査により、南海トラフ地震での県別の被害想定も実施しています。公表データによると、南海トラフ地震における県別に想定される死者数や全壊建物数は、以下のような結果になっています。
■県別の想定死者数
※出典:朝日新聞「南海トラフ地震の被害想定」
南海トラフ地震発生時に想定される震度分布で震度数が比較的高い、静岡県や和歌山県、高知県などにおける死者数が多くなると想定されています。特に、太平洋に接する面積が広い県は、被害が大きくなると想定されていることがわかります。
■県別の想定全壊建物数
※出典:朝日新聞「南海トラフ地震の被害想定」
全壊建物数では、建物や人口などが多い、愛知県や大阪府といった都市部の被害が大きくなると想定されています。東海にある静岡県から四国にある高知県まで被害の範囲が広いため、地震発生時には復興支援なども行き渡らない可能性が出てくるかもしれません。
南海トラフ地震への自分でできる対策
先日も南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表された通り、いつ起きてもおかしくないとされる、南海トラフ地震。内閣府の「南海トラフ地震臨時情報が発表されたら!」などで発表されている、幅広い地震に対し自分でできる対策をご紹介します。
家具を固定する
家具は「地震の際に転倒するもの」と考え、あらかじめ壁や天井などに固定しておくようにしましょう。また、寝室や子ども部屋には、なるべく家具を置かないようにすることも大切です。
非常用持ち出し袋を準備する
自宅が被災して住めなくなってしまうと、避難場所で生活しなくてはならなくなります。また、地震の際に必要なものを荷造りしていたら、避難が遅れてしまうかもしれません。一家で1つ、必要な生活用品などを詰めた非常用持ち出し袋を準備しておくことをおすすめします。
水や食料を備蓄する
地震はもちろん、台風や集中豪雨など、さまざまな災害の発生に備えて、飲料水や保存できる食料などはある程度備蓄しておくようにしましょう。いざ避難しても、すぐに物資が供給されるとは限りません。飲料水や食料は、最低限1人つき3日分は用意しておいてください。
避難場所や避難経路を確認する
地震が来て避難する際に慌てないように、自分の住んでいる自治体のHPなどでハザードマップを入手し、避難場所や避難経路はあらかじめ確認しておきましょう。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」より、被害リスクやハザードマップなどを確認できます。
感震ブレーカーを設置する
感震ブレーカーとは、想定以上の地震の揺れを感知した際に、自動で電気の供給をストップしてくれる機器のことです。東日本大震災の本震による火災で原因が特定されたもののうち、約54%が電気関係の出火が原因なので、感震ブレーカーは地震による火事対策に有効といえます*。
*経済産業省「地震による電気火災対策を!」
建物の耐震化を実施する
阪神・淡路大震災における神戸市内の被害者のうち、8割以上が建物の倒壊などによる圧死が原因といわれています。特に、1981年以前の建築基準法の旧耐震基準により建築された住宅は被害が大きくなる可能性が高いため、耐震化が非常に重要です**。
**内閣府防災情報「住宅等の耐震化の推進について」
巨大地震・南海トラフ地震に備えよう!
南海トラフ地震は、首都直下型地震とともに、この数十年で発生する確率が高いといわれている地震です。その影響が及ぶ範囲の広さから、最悪のケースでは、東日本大震災よりも被害が大きくなる可能性もあると想定されています。普段から、「自分が地震の被災者になりうる」と考え、対策をしておくことが重要です。