導水樋
水とくらし
トンネル漏水対策工事の事例まとめ(線導水工)
トンネルの漏水対策とは
トンネルの漏水対策は、構造物の劣化防止と安全性確保に不可欠な技術です。雨水や地下水の侵入を防ぎ、トンネルの耐久性を向上させます。主な対策には「導水工法」「注入工法」「防水シート工法」「裏込め注入工法」などがあり、導水工法は「線導水工」と「面導水工」の2種類に大きく分類されます。
目次
線導水工、面導水工の違いとは
トンネルなどのコンクリート構造物では、覆工の厚さやコンクリートの質が不均一な場合が多く、ジャンカ、コールドジョイント、クラックなどから漏水が発生することがあります。
このような漏水が特定の箇所で発生している場合は、限られた範囲に集中的に対応できる線導水工が有効です。
漏水箇所が広範囲にわたる場合は、面導水工による対応が合理的です。これらの工法はいずれも、コンクリート内部の水圧を逃がす効果があり、長期的な漏水対策として有効です。
線導水工とは
線導水工は、トンネルや地下構造物で局所的に発生する漏水に対する排水工法で、クラックやコールドジョイントなどの線状の浸入箇所に適用されます。漏水箇所が明確な場合に効果的で、次の2種類があります。
線導水樋工
漏水箇所に沿って樋状の部材を取り付け、漏水を集めて排水します。部材にはプラスチック製や金属製が使われ、施工・メンテナンスが容易です。
主な特徴:
- 漏水箇所が明確な場合に適している
- 施工が比較的容易
- 表面設置のため、メンテナンス性が高い
埋込線導水工
覆工コンクリートに溝を掘り、内部に排水材を埋め込んでコンクリート内部で水を誘導する工法です。外観に影響を与えず、スペースに制限がある場所にも対応可能です。
主な特徴:
- 壁面に突出しないため、空間制約のある場所に有効
- 景観を保ちたい箇所にも適している
- 表面に施工物が出ないため、損傷リスクが低い
面導水工とは
面導水工は、トンネルや地下構造物で広範囲に発生する漏水を効率的に排水する工法です。覆工全体から染み出すような漏水や、複数箇所から同時に発生するケースに有効で、線導水工では対応が難しいケースに適用されます。
施工規模は大きくなりますが、多数の局所対策を行うよりも経済的で効果的な場合があり、特に老朽化したトンネルや地下水位の高い地域で長期的な対策として用いられます。
面導水工の代表的な工法として「面導水樋工」があります。
面導水樋工
覆工表面に広範囲をカバーする導水路を設置し、面全体から染み出す水を集めて排水する工法です。
主な特徴:
- 広範囲の漏水を効率よく排水できる
- 将来的な漏水も予防的に対応可能
- 導水路末端に排水設備を集約でき、維持管理が効率的
今回は、局所的な漏水対策に特化した「線導水工」に焦点を当て、実際の事例を5つご紹介します。
事例1:地代隧道トンネル(石川県)
場所:石川県地代町
現場の課題
トンネルの目地、クラックから漏水があり、通行車両や歩行者に滴下した漏水がかかっていたことが課題でした。
工事内容
漏水対策として、トンネル漏水箇所にアーチ・ドレンAD026耐寒を設置しました。
改善結果
樋の設置により漏水が防がれ、通行車両や歩行者に滴下した漏水がかからなくなりました。
事例2:下半原トンネル(福井県)
場所:福井県大野市
現場の課題
トンネル断面が小さいため、大型トラック(箱車)との接触により、既設の導水樋(アーチ・ドレン)がたびたび破損し、そこから漏水が発生することが課題となっていました。
工事内容
トンネル壁面の箱車が接触していた部分を斫り、アーチ・ドレン耐寒透明(AD030耐寒透明)を使用して埋込樋に取り替える工事を実施しました。通常部と埋込部の接続は、アーチ・ドレン曲げ加工品を用いました。
改善結果
埋込式に変更したことで突出がなくなり、トンネル内での接触による破損が解消され、漏水の発生を防ぐことができました。
事例3:境トンネル(新潟県)
場所:新潟県北陸自動車道
現場の課題
トンネル断面変化部の目地から漏水が発生していました。さらに、目地部には400㎜の段差があり、付近に照明灯やラックが複数設置されていたため、アーチ・ドレンの設置は困難で、効果的な対策が求められていました。
工事内容
長さ500㎜のサイド・ドレンSDSを17ヶを、段差部壁面に沿うようアーチ型に接続しながら設置しました。
改善結果
目地部からの漏水をトンネル脇の水路へ導水した結果、道路への滴水がなくなりました。設置が困難と思われる場合でも、方法を工夫し、最適な製品を用いることで課題を解決します。
事例4:影路トンネル(福井県)
場所:福井県大野市
現場の課題
既設鋼板(5㎜厚)脇からの漏水が発生していました。一方で、既設鋼板の撤去が不可であることと、トンネル断面が小さいため壁面からの突出を最小にしたいとご要望があり、有効な対策が求められていました。
工事内容
鋼板脇の漏水を覆うようにシール・ドレンを設置し、路肩に導水するように工事を実施しました。
改善結果
シール・ドレンを設置することで漏水を防ぐことができ、道路への滴水がなくなりました。また、鋼板への穴開けはビス穴のみで済み、アーチ・ドレンのようにアンカー穴を開ける必要がないため、より容易に施工することができました。
事例6:水ノ谷トンネル(兵庫県)
場所:兵庫県神河町
現場の課題
素掘吹き付けトンネルの壁面から漏水が発生しており、道路に滴水していることが課題でした。
工事内容
吹き付けトンネルの漏水箇所にシールドレンを設置しました。
改善結果
樋の設置により漏水を防ぎ、通行車両や歩行者に滴下した漏水がかからなくなりました。
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