水とくらし
熱中症はどう予防する?水分補給のコツや発生時の対処法も紹介
厚生労働省が公表する人口動態統計によると、近年では1年に約400~1,300人もの方が熱中症で亡くなっています*。今夏も、日本各地で猛暑日が記録され、熱中症の危険性が高まっています。この記事では、熱中症を防ぐためのポイントや飲み物のほか、いざ熱中症が疑われる症状が発生した際の対処方法についてもご紹介します。
*厚生労働省「熱中症による死亡数 人口動態統計(確定数)より」
目次
熱中症で特に注意したい時期
熱中症は、真夏に発生するだけではありません。
以下のような時期に発生しやすいといわれています。
<熱中症の発生に注意したい時期>
・5月の急に気温が上がった日
・梅雨の晴れ間
・梅雨明け
・7~8月の最高気温が高くなった日中
初夏や梅雨時といったまだ身体が暑さに慣れていない時期は発汗が十分できないため、うまく体温調節ができません。熱中症が発生する危険性があり、注意が必要です。
以下は、2023年の5月から9月における、全国での熱中症による救急搬送人員をグラフ化したものです。
その間に熱中症により救急搬送された人の数は合計91,467人と、調査開始以降で過去最多となった2018年の95,137 人に迫る、 過去2番目に多い数だったそうです。
■2023年5月~9月における、全国での熱中症による救急搬送人員
出典:総務省 報道資料「令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」のデータをグラフ化
熱中症による救急搬送人員は7月と8月が最も多いものの、まだ暑さが本格化する前の5月や6月にも発生していることがわかります。
熱中症を防ぐためのポイント
では、熱中症を防ぐためには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。以下のようなポイントを考慮してみましょう。
水分をこまめに取る
1日1.2L以上を目安に、のどの渇きを感じる前に、こまめに水分を取るようにしましょう。スポーツの後など汗を多くかいたと感じたときは、塩分も一緒に取ることが大切です。
屋外では、炎天下や高温多湿になる場所を避ける
帽子や日傘を利用するほか、なるべく日陰を歩くことで、直射日光が当たらないようにしましょう。また、屋外での活動は、炎天下や高温多湿になる場所は避けるようにしてください。
屋内では、室温や湿度を適度に調節する
屋内でも室温や湿度を常に確認し、適切に保たなければなりません。エアコンや扇風機を利用し、室温や湿度が高くなりすぎないように心がけましょう。
着用する衣服も、汗を吸収するような吸水性・速乾性に優れた素材で作られているものを選び、体温をうまく逃がしてくれるような通気性も良いものを着ることをおすすめします。
熱中症を予防するための飲み物
熱中症を予防するには、水分だけでなく、塩分の補給も大切です。夏場に多く汗をかくことが予想されるようなときは、以下のような塩分を含んだ飲み物を持ち歩くことを心がけましょう。
スポーツドリンク
ナトリウムとカリウムがバランス良く配合されているスポーツドリンクは、熱中症の予防に最適です。特に、屋外での長時間の作業やスポーツをする際など、大量に汗をかく場合におすすめです。
スポーツドリンクに含まれるナトリウム(塩分)と糖分の効果により、腸での水分の吸収を促してくれます。
経口補水液
経口補水液は熱中症の予防にも効果がありますが、特に、熱中症を発症してしまった場合などに、応急処置として飲むと効果的です。
味噌汁
味噌汁は体液と塩分濃度が近いため、汗をかいて排出された塩分を補給する際に有効です。
甘酒
「飲む点滴」とも呼ばれるほど、含まれる水分と糖分、塩分のバランスが良い甘酒。発酵食品でもあり、ビタミンや必須アミノ酸などが摂取できて栄養価も高く、消化も良い飲み物といえます。
牛乳
牛乳は即効性はないものの、熱中症の予防を期待できる飲み物です。塩分は少量しか含まれていませんが、たんぱく質を含むため、血管内に水分を取り込んで血液量を増やしてくれ、体温調節がしやすくなる効果があります。
水
水を飲むだけでは、体内のイオンバランスを保てません。水分補給によって体内の塩分濃度が薄まると喉の渇きは収まりますが、代わりに大量の尿によって水分を排出してしまいます。熱中症の予防には、水分だけでなく、塩分も取ることが重要です**。
**厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」
いざ熱中症になったらどう対処する?
熱中症になると、めまいや身体のほてりなどが発生すると考えられがちですが、重症度が増すとひきつけを起こすことや意識が朦朧とすることもあります。熱中症が疑われる事態が起きたときは、以下のような流れで速やかに対処しましょう。
1. 対象者の意識があるか確認する
熱中症を疑われる症状が発生した場合は、まず、対象者の意識があるかどうかを確認します。意識が無い場合は、すぐに救急車を呼んでください。
意識がある場合は、対象者を冷房が利いている涼しい場所に移動させます。その後、対象者の着ている衣服を緩めて、体から熱を発散させやすくさせてから、氷枕や保冷材で首筋や脇、足の付け根などを重点的に冷やしましょう。
2. 水を自分で飲めるか確認する
続いて、対象者が自分で水分を飲めるかどうか確認してください。水分をうまく飲めないようであれば、周囲の人が付き添って、医療機関を受診しましょう。
自分で水分を飲めるようであれば、対象者に水分とともに塩分も補給させます。大量に汗をかいている場合には、水分とともに塩分や糖分も一緒に摂れる、スポーツドリンクを飲ませるのがおすすめです。
3. 最初の症状が改善したかを確認する
対象者を涼しい場所に移動させて、水分や塩分を補給させると症状が落ち着いた場合には、そのまま安静にして十分に休ませましょう。
もしそれでも症状が落ち着かなかった場合には、医療機関で診てもらうようにしてください***。
***一般財団日本気象協会「熱中症ゼロへ」
熱中症を甘く見ず、夏は十分警戒しよう
近年夏に猛暑日が続くことが多く、毎年のように熱中症への注意が呼びかけられているため、熱中症の危険性に慣れてしまっている方もいるかもしれません。しかし、熱中症は命に関わる危険な症状なので、決して甘く見ないようにしましょう。
政府は、熱中症の危険性が極めて高い環境下になると予想される日の、前日夕方または当日早朝に、都道府県ごとに「熱中症警戒アラート」を発表しています。テレビやSNSで呼びかけられているので、熱中症警戒アラートが自分のいる地域で発表された場合には、特に熱中症に注意するようにしましょう****。
****環境省「熱中症予防情報サイト」